マルチクラウドとは用途およびメリット

Michael Chen、シニア・ライター| 2025年2月20日

マルチクラウドは、複数のプロバイダーのサービスを組み合わせて組織のニーズに対応するクラウド・コンピューティング戦略です。マルチクラウド・ソリューションは、IaaS、PaaS、SaaSを密結合または疎結合されたアーキテクチャに統合することができ、CIOからロックインを回避し、各ワークロードに最適なソリューションを提供する適切な方法として評価されています。適切に設計されたマルチクラウドの設定では、ソフトウェアの互換性、ネットワーク機能、パフォーマンス要件、冗長性、セキュリティ、運用管理、総所有コストを考慮する必要があります。サービス・セットは通常、コスト、ビジネス・ニーズ、データ・ガバナンス要件に基づいて決定されます。

多くの場合、クラウド・プロバイダーは顧客の成功を支援するためにマネージド・サービスやセルフサービス・ツールを提供しています。その目標は、複雑さを抽象化し、統合を支援することで、マルチクラウド・ソリューションの設計と導入を簡素化することです。

マルチクラウドとは

マルチクラウド・アーキテクチャとは、組織がテクノロジー・スタックで異なるプロバイダーの複数のパブリック・クラウドやプライベート・クラウド・サービスを使用する場合を指します。マルチクラウド設定のメリットは、クラウド・プロバイダーとサービス間の統合のレベルにより決まることがよくあります。

マルチクラウドとは

基本的なマルチクラウド・シナリオでは、消費者があるベンダーの動画ストリーミング・サービスと別のベンダーのクラウドベースのフォト・ストレージに自宅のインターネット経由でアクセスして使用する場合の仕組みと同様に、企業は異なるクラウド・サービスを異なる目的に使用します。より高度なビジネス・マルチクラウド環境では、統合により、異なるクラウドで実行されるアプリケーションがデータを通信および共有できます。これにより、サービス間でデータを重複させる必要性を減らし、組織が各プラットフォームで利用可能なハードウェア、ソフトウェア、サービス、その他のツールを最大限に活用できるよう支援します。

マルチクラウドについての図と説明
マルチクラウドとは

マルチクラウド・アーキテクチャでは、組織は異なるプロバイダーの複数のパブリック・クラウドやプライベート・クラウド・サービスを使用してITサービスを提供します。

  • AWS+Oracle Database
  • Azure+Oracle Database
  • Google Cloud+Oracle Database
  • Oracle OCI+Oracle Database
  • Private Data Center+Oracle Database

管理とオーケストレーション・レイヤー

マルチクラウド・システムは、2社以上のクラウド・サービス・プロバイダーのサービスやワークロードを組み合わせることで、組織によるベンダー・ロックインの回避、支出の最大化、耐障害性の向上を支援します。

マルチクラウドとハイブリッド・クラウド

マルチクラウドとハイブリッド・クラウドは若干異なる概念ですが、重複する部分も大いにあります。マルチクラウド・アプローチは、複数の独立したクラウド・プロバイダーとオンプレミスのリソースを使用することに重点を置いています。ハイブリッド・クラウドのアプローチは、プライマリまたは単一のパブリック・クラウドとオンプレミスのデータセンターを複合して使用することに重点を置いています。

ハイブリッド・クラウドは、機密性の高いデータをローカルで確保する必要がある組織や、専門的なニーズがある組織で使用されることがよくあります。ハイブリッド・クラウドは、単一ベンダーまたはマルチベンダー・アプローチを使用して、オール・クラウド戦略への段階的な移行にも対応できます。実際には、ほとんどの組織は複数のパブリック・クラウド・サービスで運用を行っているため、マルチクラウド・ユーザーです。

主なポイント

  • マルチクラウド・アーキテクチャでは、複数のベンダーのクラウド・プラットフォームを組み合わせて使用します。
  • データがクラウド全体にわたり効率的に移動するマルチクラウド環境は、セキュリティとコラボレーションを向上させながら運用を最大化できるよう支援することが可能です。
  • マルチクラウド・アプローチには、柔軟性、より最適化された機能の選択、コストの最適化、より効率的なリソース利用など、潜在的なメリットが数多くあります。

マルチクラウドの説明

マルチクラウド戦略により、組織は複数のクラウド・プラットフォームとプロバイダーにワークロードを分散させることができます。これにより、各業務に適したツールを選択する際の柔軟性が提供されます。各タスクに最適なクラウド・サービスを選択することで、ITアーキテクトはカスタム・ハードウェア、ソフトウェア、サービス機能など、各プロバイダーの強みを活用することができます。

マルチクラウド・アプローチには2社以上のクラウド・プロバイダーが関与するため、管理は複数のレベルで行われます。各プラットフォームには独自の管理ツールとダッシュボードがあり、IT部門はその環境内で綿密な監督、構成、実行を行うことができます。ITチームはそれより一段上のレイヤーでより全体的な状況をモニターし、リソース利用、ポリシー・コンプライアンス、相互運用性、オペレーションの最適化などの要素はすべてマルチクラウド管理システムにより管理されることが理想的です。

マルチクラウドの仕組み

マルチクラウド戦略により、組織はニーズを満たすために異なるプロバイダーから複数のクラウド・コンピューティング・サービスを利用することができます。単一のクラウド・プロバイダーと提携するよりも、柔軟性と冗長性、スケーラビリティが高まるというメリットが得られる可能性があります。

たとえば、ビジネスでは信頼できるデータベースに基づいてあるプロバイダーを選択する一方で、低コストのストレージや機械学習サービスを求めて別のプロバイダーを使用する可能性があります。

マルチクラウドのメリット

ほとんどの組織は、コストの最適化、データ・レジデンシー、ビジネス・アジリティなどのマルチクラウドのメリットを得るために、複数のクラウド・プロバイダーを使用しているか、または使用する予定です。これらのメリットやその他のメリットを実現するカギは、適切な組み合わせでプロバイダーを選択することです。幸いにも、マルチクラウド戦略を策定する企業は、一定のデュー・デリジェンスを行うことで、独自のITアーキテクチャを維持し、データ・セキュリティと相互運用性を向上させながら、サービス、価格、機能を最適化できます。実現にはある程度の労力が必要であるものの、マルチクラウドの導入が正しく行われれば、組織に大きなメリットをもたらすことができます。

マルチクラウド戦略の主なメリットは次のとおりです。

  • 柔軟性の向上:複数のクラウド・ベンダーを使用している組織は、新しい製品やサービスの立ち上げ、新市場への参入、新入社員の雇用などに応じて、その場でサービスを追加したり、スケールアップしやすくなります。少数のプロバイダーが提供するサービスに限定されないため、マルチクラウドの堅実なアプローチは、全社にわたる柔軟性の最大化を支援することが可能です。
  • ベンダー・ロックインの軽減:ベンダー・ロックインの軽減:複数の クラウド・ベンダーを使用することで、組織はより多くの選択肢を得ることができます。また、新しいプロバイダーの試験導入やサービスのテストおよび評価もより容易に行えます。
  • ディザスタ・リカバリの向上:災害が発生した場合、マルチクラウド環境では異なるクラウド・ベンダーによるバックアップを冗長化できるため、フェイルオーバーを迅速化できます。これにより、地理的範囲が広がるため、単一障害点を減らすことができます。
  • コスト管理の最適化:マルチクラウド環境では、組織はプラットフォームやベンダーを自由に選択できるため、価格を比較して、手元のタスクに最も経済的なクラウドを選択する柔軟性が高まります。
  • パフォーマンスと可用性の向上:マルチクラウド管理により、組織はクラウド間のリソース割り当てを最適化してパフォーマンスを向上させることができます。また、重要な業務アプリケーションを複数のクラウドで並行して導入できるため、一方のクラウドが利用できなくなった場合でも、もう一方のクラウドでワークロードを引き継ぐことができます。
  • 異なるプロバイダーが提供する最高のサービスへのアクセス:マルチクラウド・アプローチにより、組織はニーズに最適なサービスを選択することができます。
  • 地理的なリーチの拡大:データのローカライゼーションが必要な組織は、コンプライアンス、プライバシー、および技術的要件に対応するために必要に応じて固有の地域内でサービスを提供することで、マルチクラウド構成がデータ・レジデンシーをより適切に実現できると考えることがよくあります。
  • 規制コンプライアンス:マルチクラウド戦略では、プロバイダーの選択肢が多く、サービスが個別化されているため、特定の規制コンプライアンス・ガイドラインに対応するためにセキュリティとプライバシー機能をカスタマイズすることが容易になります。

マルチクラウドの課題

マルチクラウドは有用であり、多くの意味で不可欠なアプローチですが、重複するテクノロジーや分散データを管理することで課題が生じる可能性があります。以下に、最も一般的なものをいくつか紹介します。

  • 複雑な管理:複雑な管理:複数のクラウド・プロバイダーを管理すると、単に同じクラウド管理エクスペリエンスを提供するベンダーがないことから、運用が複雑になる可能性があります。API、接続性、自動化ツール、ダッシュボードには、ベンダー固有の表示と微妙な差異が伴います。すべてのクラウド・サービスを最適に実行することができるようにするには、各管理ダッシュボードを操作し、各管理ダッシュボードが組織で使用しているマルチクラウド管理システム全体にスムーズに統合されていることを確認できる人が必要です。ベンダーが支援できる場合もあれば、専門的なサービスプロバイダーを導入する必要がある場合もあります。
  • セキュリティとコンプライアンス:クラウド間で一貫したセキュリティとコンプライアンスを実現することは困難です。プロバイダーは異なるインターフェースと機能を備えていることが多い、独自のセキュリティ・ツールとサービスのセットを提供することがよくあります。そのため、企業のセキュリティ・ポスチャを一元的に把握することができず、データ・ガバナンスに支障をきたしたり、ID・アクセス管理が行き届かないなどの問題が発生する可能性があります。
  • 相互運用性:異なるクラウド・プラットフォーム間の統合の欠如は、大きな障害です。各クラウド・プロバイダーに独自のAPI定義とゲートウェイがある場合、問題が発生する可能性があります。異なる環境全体で複数のゲートウェイを管理すると、それぞれに個別の構成、認定資格、APIキーが必要なため、複雑さが増します。
  • コスト管理:各クラウド・プラットフォームには、独自の価格モデル、請求方法、使用量の指標があります。可視性の欠如と相まって、プロバイダー全体にわたり、包括的なコストの比較把握が困難になる可能性があります。
  • データ・ガバナンス:マルチクラウド環境におけるデータの整合性、プライバシー、管理の実現は、各ベンダーがデータ使用を管理する独自の手段を提供しているため複雑です。
  • ベンダーロックインの回避:ロックインを回避するには、特定のベンダーへの依存度を最小限に抑えることが重要ですが、これは困難である場合があります。マルチクラウド戦略に取り組んでいるCIOは、通常、専用相互接続サービスによる統合をサポートするベンダーや、提供するサービス全体にわたり、より優れたデータ使用を実現するためのパートナーシップがあるベンダーを好みます。
  • スキル・ギャップ:マルチクラウド環境は、異なるプラットフォームを管理および運用するために必要なスキルという点で、独自の課題をもたらします。個々のクラウド・プラットフォームに精通していることは一般的ですが、クラウドの枠にとらわれない専門知識を持つ人材は稀です。また企業は、マルチクラウド環境のセキュリティとコンプライアンスの意味を理解し、プラットフォーム間におけるデータ移動と統合を管理する方法を知る人材の確保にも問題を抱えている可能性があります。

こうした問題やその他の問題に対処するには、トレーニングおよび開発プログラムに投資するか、マネージド・サービスを提供するクラウド・サービス・プロバイダーと提携することを計画します。

マルチクラウドの管理

マルチクラウド・アーキテクチャを設計する際には、データ移動の必要性、レイテンシの新しいソース、運用管理方法、オーケストレーション、セキュリティについて考慮することが必須です。

データ移動の考慮。
アプリケーションによっては、オンプレミス・データベースや他のクラウドに保存されているデータへのアクセスが必要な場合や、そのメリットを享受できる場合があります。データの移動は簡単です。セキュリティの維持と、少なくともソース・システムと同等に堅牢なアクセス制御メカニズムの確立は困難です。データ移動には時間がかかり、エグレス料金が発生する可能性があります。多くの組織では、新しいデータベースにデータを移行するのではなく、使用するクラウド全体にわたり同じデータベース・システムを使用する方がよいと考えるでしょう。この選択肢は、クラウド・プロバイダー間の最近の合意により、Oracle Databaseプラットフォームが他のハイパースケール・クラウド・プロバイダーのデータセンターでも実行できるようになったことで現実的になりました。

レイテンシの最小化。
ネットワーク・レイテンシはアプリケーション・パフォーマンスに直接影響し、アプリケーションによってレイテンシ要件は異なります。マイクロ秒単位の低レイテンシが必要なアプリケーションもあれば、2桁ミリ秒の遅延を許容できるアプリケーションもあります。

運用管理とオーケストレーションの標準化。
それぞれのクラウドには独自のツールとワークフローがあり、スムーズな接続性と効果的なトラブルシューティングと管理を実現するには特定のナレッジと専門知識が必要です。クラウド・プラットフォーム間でマルチクラウドを管理するための標準的な手法と手順を可能な限り確立することは、成功のために不可欠です。

セキュリティ課題に対する計画。
マルチクラウド環境では、異なるセキュリティ・ツールと複数のベンダーにより、より複雑なセキュリティ運用と人員増が発生し、コストの上昇と新しいリスク・エクスポージャーにつながる可能性があります。

階層化されたセキュリティ戦略では、各クラウド・プロバイダーが提供する組み込みのセキュリティ・サービスと、サービスの一貫した管理を実現するクラウド・プロバイダー間のパートナーシップを併用することで、問題を簡素化することができます。

マルチクラウドのユースケースと例

あらゆる規模の企業がマルチクラウド戦略の一環としてIaaSプラットフォームを提供する上で、オラクルのクラウドインフラストラクチャを利用しています。

  1. ワークフォース・ソリューション企業であるLiantisベルギーで225,000人以上の自営業者と45,000人以上の雇用主のスタートアップと成長をサポートしています。同社は、耐障害性の向上とコスト削減のため、クラウドによるディザスタ・リカバリ環境を再構築することを望んでいました。ディザスタ・リカバリをMicrosoft Azureのメモリに最適化された仮想マシン上のOracle Databaseでの実行から、Oracle Database@Azure上のOracle Exadata Database Serviceに移行したことで、LiantisはあたかもネイティブにAzureの一部であるかのようにオラクルのサービスを利用できるようになりました。この効率的なマルチクラウド・アーキテクチャにより、レイテンシが非常に低くなり、応答時間の短縮、セキュリティ制御の強化、コスト削減が実現しました。
  2. Conduentは、カリフォルニア、フロリダ、ニュージャージー、ニューヨークなど、米国の10大料金所システムのうち6つを含む600以上の政府機関および交通機関にデジタル・ビジネス・ソリューションとサービスを提供しています。Conduentは、合計で毎日1,300万件近い料金徴収トランザクションを処理しています。同社は、クライアントの1社向けに、トランザクション・フローの効率化、レイテンシの最小化、システムの耐障害性の向上を実現するクラウド・ソリューションを求めていました。そこで、一元化されたオンプレミス導入からOracle Database@Azureに移行しました。Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とOracle Exadata Database ServiceをAzureデータセンターに併設していることから、ConduentはOracle Databaseの機能を活用、一方で開発者は一貫したAzureエクスペリエンスを享受できます。
  3. TIM Brasilは、ブラジル全土の5,000万人以上の市民に高速のモバイルおよびブロードバンド・サービスを提供する大手通信会社ですTIMは、マルチクラウドのアプローチを選択して、カスタマー・エクスペリエンスに直接影響を与えるアプリケーションの変革を推進しました。同社は、OCIとAzureの両方を最大限に活用するために、Oracle Interconnect for Microsoft Azureを選択しました。TIMは、8,000件のワークロードと16ペタバイトのストレージをクラウドに移行し、カスタマーサービスの問い合わせ処理に要する時間を50%削減しました。

マルチクラウド・アーキテクチャ

マルチクラウド・アーキテクチャは、組織が2社以上のプロバイダーからのクラウド・プラットフォームやサービスを統合することで生まれます。クラウド間でのデータの共有は、統合の一般的な推進要因です。データ・セキュリティや低レイテンシのニーズによっては、統合は2つのクラウド環境間のアクセス方法を定義することと同程度に簡単な場合があります。しかし、データ・セキュリティ、一貫したガバナンス、低レイテンシに対する高い要件がある場合は、通常ベンダー間の契約によって実現されるクラウド間のオーケストレーションを検討します。

いずれにせよ、各アプリケーションのデータ利用の大部分が単一ベンダーのクラウド内に収まるようにシステムを設計することが常により賢明です。

マルチクラウド戦略の構築

マルチクラウド・アプローチでは、特に組織のインフラストラクチャの拡大とプロバイダー数の増加に伴い、アプリケーションとデータの管理が複雑になる可能性があります。慎重なベンダー選定と、どのクラウドでもほとんど変更を加えることなく実行できる標準ベースのマイクロサービスに向けた開発への取り組みが、役立つ可能性があります。

マルチクラウド戦略を策定する際に考慮すべきベストプラクティスをいくつかご紹介します。

1.移行と統合の計画
ITチームは、たとえば、Oracle Cloud InfrastructureとMicrosoft Azureのようなエコシステム・パートナーであるプラットフォームを選択し、オープン・スタンダードを活用した厳密な運用・利用プロトコルを策定して独自のプライベート・クラウドを構築することで、ITチームはいくつかの賢明な意思決定によって統合のしやすさを最大限に高めることができます。サービス間の効果的で効果的な相互運用性は、マルチクラウドへの投資に対してより大きなリターンをもたらす可能性があるため、可能な限りパートナーシップを確立しているプロバイダーを選択します。

2.データベース戦略の構築
ほとんどの組織は、1つか2つの戦略的製品を中心としたデータベース戦略を開発しています。ハイパースケール・クラウドでは、ベンダーの提供する製品を使用することが容易に選択できるため、そうした道から容易に外れます。しかし、リポジトリに互換性がない場合、2つのシステムからデータを使用しても複雑な処理が必要になり、セキュリティ・ポリシーとガバナンス・ポリシーが一致することがほとんどないなど、難しい選択を伴う二分化された戦略につながります。

単一のデータベースは、データ管理の簡素化を支援し、環境全体で一貫性とデータ統合を維持しやすくします。また、あらゆるソースからのデータのクエリと分析を容易にし、情報の包括的な可視化を提供すると同時に、複雑さを軽減し、セキュリティとガバナンスを向上させるよう支援します。

データベース戦略は、ビジネスによるデータの長期的な利用を可能な限り幅広く考慮する必要があります。企業にとって非常に機密性が高く重要な戦略的データは、セキュリティとガバナンスが確立されたシステムに保存する必要があります。各ベンダーが提供するクラウド・データベースにはまだ役割はありますが、それをデフォルトにすべきではありません。

幸いなことに、選択したデータベースを最適なクラウドで実行することはますます容易になっています。

3.統合と自動化サービスの調査
ハイパースケール・クラウド・ベンダーがパートナーシップを締結するにつれ、それぞれの顧客が互いのサービス全体にわたり自社の提供するサービスを利用できるよう支援する方法も開発されています。最初のパートナーシップの中には、パブリック・クラウド間やパブリック・クラウドと顧客のプライベート・クラウド間に高パフォーマンス・ネットワークを構築するものもありました。これらのサービスは、単にインターネットを使用しているよりもレイテンシが優れており、通常、他の データ・エグレス・メカニズムでは増大する可能性のある、データ・エグレスに対する料金が請求されません。

また、統合を支援するサービスも提供しており、必要に応じてデータの移動プロセスを自動化します。最も一般的なアプリケーションの1つは、分析向けデータのステージングです。最後に、マルチクラウド・オーケストレーション・システムは、IT部門が単一のシステムから各クラウドにおける組織の展開を管理できるよう支援します。

4.リアルタイム・データ移動と管理の実現
マルチクラウド環境では、クラウド・プラットフォーム間でデータをリアルタイムに移動および管理します。これはAPI、データ・コネクタ、自動化ツールによって実現され、異なるクラウド間でデータをリアルタイムに転送および同期することができます。リアルタイム・データ移動および管理戦略により、組織は保存されているクラウド・プラットフォームに関係なく、重要なデータを常に最新の状態に保ち、アクセス可能な状態に保つことができます。

5.API管理とエンドポイント・セキュリティに対するポリシー設定
前述のとおり、相互接続性はマルチクラウド・アーキテクチャの大きなメリットの1つであり、マルチクラウド戦略の重要な部分と考える必要があります。ITチームはこれを実現するために、統合 API エンドポイントを確立し、ID・アクセス管理システムを統合する必要がありますが、いずれもプラットフォームや関連ツールによっては困難なタスクになる可能性があります。また、相互接続により、マルチクラウド環境全体でサービスが互いに公開されるため、関係するすべてのシステムに適切な権限が必要となり、新しいセキュリティ上の懸念が生じます。

6.データ・セキュリティとコンプライアンスの重視
これまで説明してきたように、複数のクラウド・プロバイダーと連携することにはメリットがある一方で、データ・セキュリティとガバナンスの課題が生じる可能性もあり、改めてリスク評価を行うことが必要になります。最初に考慮すべきことの1つは、データの機密性です。財務および人事アプリケーションのように機密データをホストするアプリケーションもあれば、マーケティング・ツールのようにプライバシーに対する要求がそれほど厳しくないシステムもあります。アプリケーション間で適切なアクセス・レベルを設定することは、機密データを保護するためのカギであり、この作業にはマルチクラウド環境全体でアクティブなモニタリングを行う必要があります。

7.監視および管理ツールの追加
マルチクラウド環境の複雑さに取り組むITチームにとって、有能なモニタリングおよび管理ツールは非常に貴重です。これらのツールには経費がかかる可能性がありますが、マルチクラウドのアプリケーションとインフラストラクチャをフルスタックで可視化し、リアルタイムのモニタリング、リソース管理、自動化を提供することができるため、投資をする価値があります。これらのツールの多くには、パフォーマンスの問題を回避し、コストを削減する方法を明らかにするリソースと使用に関するインサイトを提供する分析も含まれています。

オラクルによるマルチクラウド導入の加速

Oracle Cloud Infrastructure (OCI)のマルチクラウド・サービスは、企業が複数のクラウドを組み合わせて、コスト、機能、パフォーマンスを最適化できるように支援します。具体的には、オラクルはOracle Real Application ClustersやOracle Autonomous Databaseなどのソリューションにより、データベースとアプリケーションの最新化を支援します。Microsoft Azure、Google Cloud、Amazon Web Servicesなどとのパートナーシップにより、オラクル独自の機能と他のクラウド・サービスプロバイダーの主要なサービスを組み合わせることができます。

OCIの40以上のグローバル・クラウド・リージョンは、データ・レジデンシーに関する要件への対応を支援し、マルチクラウド・サービスは、人材、プロセス、テクノロジーを最大限に活用できるよう、クラウド・プラットフォーム全体にわたる標準の運用および管理手法、手順、ツールの容易な確立を支援します。

マルチクラウド環境は冗長性を提供し、複数のプラットフォームにわたりワークロードを分散できるようにすることで、高可用性の確保を支援します。このアプローチは、ワークロードごとに最もコスト効果の高いクラウドサービスを選択できるため、IT支出の最適化も支援します。全体として、マルチクラウドはクラウド・コンピューティングに汎用性の高いアジャイルなアプローチを提供します。

ハイパースケール・プロバイダー間で新たに締結されたマルチクラウド・パートナーシップは、データ・サイロやコストのかかる相互接続を削減し、分析、AI、エッジ・コンピューティング、エンタープライズ・アプリケーションなどのパフォーマンス向上を支援します。この記事ではその方法をご紹介します。

マルチクラウドに関するFAQ

マルチクラウド戦略の例を教えてください。

マルチクラウド戦略の例としては、クラウドの処理能力とストレージのためにAmazon Web Services(AWS)を利用すると同時に、高度なAI機能とローカライゼーションのためにOracle Cloud Infrastructureを活用する企業が挙げられます。このアプローチにより、異なるハイパースケール・プラットフォーム間でワークロードを分散することで信頼性を高めると同時に、コスト効果の高いオプションを選択することが可能になります。マルチクラウド戦略を活用することで、企業は各プロバイダーの強みを生かし、ITインフラストラクチャの柔軟性と耐障害性を高めることができます。

クラウドとマルチクラウドの違いを教えてください。クラウドとマルチクラウド・コンピューティングの違いは、データ・ストレージ、処理能力、サービス・モデルとして販売されるさまざまなアプリケーションを含むインフラストラクチャとサービスのために、複数のクラウド・プロバイダーを考慮し、戦略的に利用することにあります。マルチクラウド戦略により、ビジネスは異なるプラットフォームの強みのより効果的な活用、コストの最適化、さまざまな環境わたるにワークロードの分散による耐障害性の強化を実現し、パフォーマンスを向上させ、単一のクラウド・プロバイダーのみに依存することによるリスクを軽減することができます。

マルチクラウドを使用する企業について教えてください。あらゆる業界、あらゆる種類および規模の企業がマルチクラウド戦略を使用しています。メール・サーバーや共有ドライブのドキュメント・ストレージなど、基本的なツールとサービスであっても、2つの異なるクラウド・サービス・プロバイダーを使用している場合は、マルチクラウド環境となります。企業は、技術的な理由、コスト上の理由、あるいは単に複数のベンダー・パートナーがいることを好む理由から、マルチクラウド・アプローチを選択することがよくあります。複数のクラウド・プラットフォームを利用することで、企業のクラウド移行を加速し、IT部門がデータセンター・ビジネスを脱却できるよう支援することができます。

マルチクラウドは適切なアイデアでしょうか。ほとんどの企業にとって、適切なアイデアです。マルチクラウド戦略は、カスタマイズのしやすさを最大限に実現し、クラウドを全面的に利用する場合でも、オンプレミス環境とクラウド環境の間で運用を分割する場合でも機能します。単一のクラウド・プロバイダーを使用する場合と比較して、マルチクラウド・アプローチは、組織のニーズに最も適した機能とサービスをより柔軟かつ自由に選択できるようにします。

今後はマルチクラウドが主流になる理由を教えてください。より多くのソフトウェアとサービスがクラウドに移行する中、マルチクラウド・アプローチは不可欠となっています。クラウド・サービスが業務に統合されている基本的な仕組みを考えてみましょう。データ・ストレージとバックアップ、クラウド・メール・サーバー、チャットと動画のコラボレーション・ツールなど、これらが業務に不可欠になるにつれ、企業はマルチクラウド構成により深く取り組むことになるため、効果的な管理ツールと戦略が重要になります。